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まずはシューマンから。ピアノソロ2曲「トロイメライ」、「アラベスク」はともに、これぞシューマン、THEシューマンという演奏でした。内声がよく聴こえ和声進行の美しさを再確認した次第。続く歌曲「女の愛と生涯」は橋川氏による丁寧な歌詞の解説つき。ガットネロではの特典ですな。ピアノと織りなす旋律のうえに橋川氏が作り出す表象が加わり、憂い、戸惑い、喜び、悲しみが、聴く者にぐっと迫る。先のピアノソロといい、この「女の愛と生涯」といい、初めてシューマンを聴くという人がいれば格好の曲であり演奏でした。ヴォルフの歌曲6曲は前半3曲がゲーテの詩によるもので、後半がメーリケ。やはり丁寧な解説つき。ありがたい。シューマンより約半世紀あとのその歌曲は、違いもくっきり。調性の縛りが希薄になった分自由に飛翔する旋律では、ピアノの役割も大きい。橋川氏自身「大好き」だというヴォルフのこの日の6曲は、いずれも屋外の陽光が感じられるような曲想で、氏のキャラとぴったり。前半の「女の愛と生涯」の終曲との対比が鮮烈でありました。アンコールは、ああ嬉しや、シューマンの名曲中の名曲「献呈」。宮崎&橋川ヴァージョンはとても晴れ晴れとしながらも初々しい「献呈」でした。橋川氏は、数週間後、約5年間のドイツ留学へ旅立たれます。帰朝されたら、さらにブラッシュアップされたソプラノをガットネロにて聴かせてください。ボン・ボワイヤージュ!
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ガットネロ・Classic Café
開場 18:30/開演 19:00 会費 2,000円 ▼第24回 ソプラノとピアノで綴るドイツ音楽の流れ▼ 9月7日(金) 橋川 泉(ソプラノ)+宮崎 剛(ピアノ) 主な曲目:シューマン・・・アラベスク 作品18 シューマン・・・女の愛と生涯 作品42 (全曲) ヴォルフ・・・蜂蜜と少年、庭師 他 バッハ・・・イタリア協奏曲 BWV971 (全曲) |
今回の西條八十は、野口雨情、北原白秋とともに、明治・大正・昭和を生きたという意味ではコンテンポラリーであり、当時このの「三大詩人」のうちの、いわばアンカー。なので、歌詞に加えて旋律も「モダン」です。HAMORI-BE自身による曲解説もあったが、『かなりや』の詩は、詩そのものというより概念が新しい。それは清濁の「濁」を(あくまでやんわりと)童謡に導入したところだろう。1番から3番にかけて、小さな鳥に対して「そんな殺生な」と言いたくなる歌詞が続き、しかし4番では救いがあってほっとする、という構成。4番では旋律とリズムも「軟化」してほっ。この変化をHAMORI-BEが巧みに歌い分けた。『風をみたひと』と『お菓子と娘』は前者がイギリス詩からの訳で後者はパリ情景を歌ったもので、いずれも西洋の匂いを伝える曲。初演当時はさぞ斬新であったことでしょう。この日この2曲はそれぞれ小原氏・中川氏のソロでの演奏だったけれど、プラグラムの構成のうまさとHAMORI-BEの歌に対する真摯さでもって、今にあっても当時の「西洋へのあこがれ」が漂った。後半には『蘇州夜曲』で東アジアの大陸の風が吹いた。この曲いろっんな人がカヴァーしてますね。男声デュオをライヴで聴けるなんて稀有なことでは? この歌の再現スタイルとしては、歌詞においては時代を経ていることが客観性を担保し、ゆえにフィルターを通すことなく詩情を鑑賞でき、旋律においては過剰な表現を排したうえでデュオの美しさを加味したという、きわめてピュアかつ新鮮なスタイルなんじゃないだろうか。アンコールは『浜辺の歌』で日本の海の風が吹いた。 |
HAMORI-BE(はもりべ)の うた☆カフェ Vol.8
(「ザ・フェイズ」は2011年4月から「ハモリベ」に改名しました) 8月24日(金) 昼 14:30 open 15:00 start 夜 18:30 open 19:00 start 定員各15人 要予約 会費:各2500円(1ドリンク付き) うた:HAMORI-BE(はもりべ)中川公志・小原有貴 ピアノ:古谷優子 |
まずはピアノで、ムーンリヴァー、そして「慕情」のテーマ曲という超有名映画音楽2曲から。久保ヴァージョンだとこれまた新鮮。音は多いのだけれど、どうしたってくどくならないのが久保風味。お人柄かしら。この日のライヴでは、珍しい久保さんのピアノ弾き語りが聴けました。声楽家・テノールを志しながらも断念した現在のそのお声は、ご本人は「しわがれ声」とおっしゃるけれど、歌声になるととてもよいではありませんか。少し息苦しくって、ときどき高音が届かなくって、そういうのがかえっていい感じ。雰囲気はまったく異なるけれど、ゲーンズブルの晩年のあの声の感じ。失恋とか諦念とか待ちぼうけとか、そういう歌詞に似合う感じ。また聴きたい感じ。津軽三味線は、「十三(とさ)の砂山」、当然「津軽ジョンカラ節」。至近距離も至近距離、お客さんが久保さんを50㎝くらいに扇型で囲んでの鑑賞。加えて、津軽三味線の「叩く奏法」「叩かない奏法」の実演つきレクチャーも。それにしても久保さんのトークは面白い。誇張などのケレン味はまったくなく、いわば企まざるおかしみがあって、これもまたお人柄なのでしょうね。三味線のレクチャーでは、激しい奏法がいかに過酷かを久保さんが語ると(詳しくは書けません、あしからず)、気の毒よりも滑稽でおかしくてたまらない。ピアノのライヴでミスタッチをしてしまったら、その箇所をその後何度も繰り返して弾き、あたかもミスではなく正しい旋律であるかのようにしてしまうなんていう話をひょうひょうとするので、笑い声を抑えるのに必死になってしまう。これもこもれびカフェの大きな楽しみです。演奏の後半は再びピアノに戻り、個人的に大好きな、もはや名曲「風の行方」(作曲:久保比呂誌)も聴けて、この日もこもれびカフェを満喫いたしました。
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こもれびカフェ Vol.3
8月4日(土) 15:00開演(14:30開場) 久保比呂誌(ピアノ、津軽三味線) 会費:2000円(1ドリンク付き) 神戸生まれ。幼少よりピアノを始め、大学では作曲科を専攻する。作曲家・ピアニストとして活動していたが、ある日偶然耳にした故、初代・高橋竹山師の「津軽じょんから節」に感銘を受け、ついには津軽三味線奏者を志す。後に竹山節本流継承者、田中竹仙(ちくせん)に入門。「津軽三味線とピアノ」を演奏するという異色のスタイルで注目され、TV・ラジオ出演も多数。CM録音、全国各地のホール、酒蔵、学校等でのコンサート活動を展開中。またオリジナル曲の制作、劇団公演、ミュージカル、ダンス公演等の音楽制作を担当する等、作曲家としても精力的に活動中。CDはこれまでに「風の行方」「こもれび」がリリースされている。 |
プログラムにない、ショパンのポロネーズ第1番(ピアノソロ)からスタート。続く2曲目は序奏と華麗なるポロネーズ(チェロ&ピアノ)。いずれも悲壮感やら、いわゆるショパンの悲しく切ない「望郷の念」などを聴きとらねばならぬ作品ではない。とはいえ1番は嬰ハ短調ゆえ激しくもウツな旋律から始まるのだが、続くアルペジオの飛翔感と転調後の流麗な旋律を、宮崎氏が振幅の大きい表現とペダルの巧みな操作でもって奏することで、力強く凝縮されたポロネーズになった。序奏と華麗なるポロネーズはハ長調。やはりほっとしますな。歌心も詩情もあふれたチェロの旋律が美しい。ときに、ガットネロの広くない(はっきり言ってかなりせまい)場所でのライヴのウリは、ほぼすべての聴衆が「砂かぶり」で楽しめることなんだけれど、それゆえよくわかるんです。たとえばこのチェロとピアノのポロネーズが、非常に聴きやすい曲ではあっても、演奏者にとっては難曲であることが。チェロの弓の動きによく表れている。この曲、さらにチェロパートの難しい編曲があるらしい。大町さん、次は超絶技巧ヴァージョンでお願いします。3曲目の幻想ポロネースは第1番とは対極にある曲想で、瞑想的・内省的でありながら激情あふれる、いわば複雑な曲。英雄ポロネーズのようなわかりやすさなし。その深い音楽性のために聴く側が迷子になりそうなんだけれど、この日の宮崎版では、演者も聴者も集中力途切れることなく、ショパンの晩年の深ーい深ーい悲しみの深淵を共有したのでした。ベートーヴェンは2曲。ピアノソナタ第1番のあと、チェロとピアノのためのソナタ第5番。第3番が最も有名だけれど、個人的に、ベートーヴェンの後期の作品が好きなのと、フーガというスタイルも大好きなのでこの日の5番楽しみにしておりました。さまざまな要素がぎゅっと詰まったような第1楽章と、フーガ形式の第3楽章にはさまれた第2楽章のアダージョが、たゆたうたゆたう。この3つの楽章の対比が素晴らしく、大満足。そしてアンコールのリベルタンゴと白鳥で満腹。かなり濃ーいこの日のクラシックカフェの雰囲気伝わりましたか?
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ガットネロ・Classic Café
開場 18:30/開演 19:00 会費 2,000円 第23回 8月3日(金) 大町 剛(チェロ)+宮崎 剛(ピアノ) 主な曲目:ショパン/序奏とポロネーズ 作品3、幻想ポロネーズ 作品61 ベートーヴェン/ピアノソナタ 第1番 作品2-1、チェロとピアノのためのソナタ 第5番 作品102-2 |